すばらしい名作!!

 新潮文庫が熱いんですよ!!今日は海道龍一朗"真剣"を読了。

真剣―新陰流を創った男、上泉伊勢守信綱 (新潮文庫)

真剣―新陰流を創った男、上泉伊勢守信綱 (新潮文庫)

これは、剣聖といわれ竹刀を考案した、上泉伊勢守信綱を題材とした小説で、海道さんのデビュー作。歴史ものを色々と読んできたけれども、それらベテランの方々にも劣らないような素晴らしい作品であると思います。北上次郎氏も絶賛!!
 なんといっても、立合いのシーンの描写が本当に迫力があり、また緊張感が漂う。読んでいて背筋が伸びて、息を呑んでしまう。冒頭での北畠具教との立合いシーンから始まり、そこからぐいぐいと引き込まれていく。その後は、14歳で源五郎と名乗り鹿島新当流の修行を始めるところから描かれる。鹿島の修行の最後に行われる立切仕合では、仕合に対する源五郎の内面もしっかりと描かれる。そして、秀綱となり陰流を学び、戦国武将として1城を持つ日々、北条との戦を繰り広げながら、最後は武田の軍門に下る。武田の軍門に下った後、信玄に隠居を願い出る際には秀綱だけでなく、信玄の人の大きさも描かれる。他家に仕えない事を条件に信玄から「信」の字をもらい信綱と名乗る事になる。
 描かれるのは信綱だけではなく、その後運命のような邂逅を果たす事になる、宝蔵院流槍術の祖宝蔵院胤榮が宝蔵院流槍術を編み出すまでの過程も描かれる。最後には邂逅を果たし、信綱、胤榮は出会い、相対する事になり、その場には柳生新陰流の祖柳生宗厳も立ち会う。最後の信綱、胤榮による立合いのシーンはまさに圧巻であり、まさにそこで行われているかのような緊張感を感じさせてくれる。本当に素晴らしい作品。今後の歴史小説では海道さん抜きでは語れなくなるのじゃないかと感じさせてくれる。
 それにしても、最近の新潮文庫は素晴らしい作品を出してくるなぁと。