極寒の世界…

 今日は"ユーコンの疾走"を読了。

ユーコンの疾走 (光文社文庫)

ユーコンの疾走 (光文社文庫)

 本の雑誌11月号の北上次郎氏の書評を読んで気になった本。早速読んでみたわけですが…まずはいかにアラスカという地の環境がすさまじいものかということがわかる。氷点下40℃以下の世界では、素手を出しておくと凍ってしまう。水に落ちてしまい、何とか上がったものの、マッチを擦ろうとした体勢のままで凍死して氷となって見つかる人。人が生きている世界でも、最も過酷な世界ではなかろうかと。
 そんな中、アラスカの西端の海沿いにある町ノース。ここで1920年代の冬にジフテリアが発生する。本来なら、冬前にワクチンを入手していたが、その年に限って注文したものが届かず、冬に入る前の最後の定期便が出てしまう…その後ジフテリアの発生がわかり、このままでは、住む人たちのほとんどの命に危険が及ぶ事態となってしまう状況。当時はまだ航空でのアラスカへの道というのは出来ていなくて、色々な危険性を考えた結果、犬橇りでワクチンを運ぶことになる。普段から犬橇りで郵便配達をやっているような人たちであるが、その冬は厳冬で、本来ならタブー視されている氷点下40℃以下での運搬をしなければならない。運搬人たちは命を懸けてワクチンを運搬していく…という実話。
 運搬人と犬たちの熱いつながりなどが書かれていたりして、犬と人とは長い付き合いの中で、いかに信頼関係を築くかというのもわかって楽しめる。運搬人たちは命を懸けて仕事をしたにもかかわらず、インタビューには「普段どおりの仕事をしただけ」という。それでも「そのことで大勢の人の命を助けられたのはうれしい」という。本当にそういう姿がかっこいいなと思ったし、きっと子どものころの僕はそういう仕事にあこがれただろうな…と思ってしまう。寒いのは苦手だから、さすがにアラスカに行こうと思わないけど…なんというか、仕事について考えてしまったなぁ。